悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓 @3”  作:キョン

悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓in姉妹 @3”

昨日は姉妹の変な会話のあった家の食卓。

しかし今は姉が喋り続けているだけである。天王はそれに適当な間隔で相槌を打つ。

自分は一切話さず、黙々とご飯を口に運んで行く。それが今の風景である。

初めは「買ってきて食う」と言っていた天王だったが、結局「無理やり引き止めているんだから」という理由でご飯は食べてもらっていた。

天王は相槌を打ちつつ、さっきの「無理やり」発言でふっきれたのか、ものすごい速度で食べていく。

しばらくその光景が続き、「御馳走様でした」と丁寧に天王が挨拶をして数分後に全員食事が終わった。

「ど、どうだったかな?」

「あ〜、普通」

「お世辞って知ってる? もしくは社交辞令」

「お前に気を使う必要性は無いからな」

む〜……本当にいい性格してるよね、こいつ。

あからさまに不機嫌な事に気付いたのか、天王は話を逸らした。

「ま、それはいいとして、とりあえずちょっと出くる」

「へ?どっか行くの?」

反応したのは姉だった。

「あぁ、家の近くの銭湯行ってくる。さすがにここの風呂には入れないからな」

ちなみに、さっきの食事中に決定したことだが、想像以上に精神年齢が低いことが判明した姉には、敬語を使わないようにしたそうだ。しかし、新密度が上昇した気がするのはなぜだろう?

「そ、ってでも確か今日銭湯休みだぞ?」

「え?マジすか?」

「確かあの辺一帯って今日大型下水調査とかで、今日いっぱい水道が使えないらしいよ」

「あ、そうだ……。くそ、参ったな」

姉はニヤリと不敵な笑いを浮かべて、

「もう家のお風呂に入るしか無くなったねぇ……ククク」

天王は露骨にいやな顔をして、

「なら、もう少し離れた所に……」

「あの、この近辺には銭湯ってあそこしかなかったような……」

「う……………冗談だろ……」

さらに眉間にしわを寄せて天王は言った。

「ククク、本格的に逃げ場ないねぇ」

「っ!……仕方ない。ここの風呂借りるわ、いいか水岡(妹)?」

「え、私はいいけど……」

「コラコラ、今現在この家の長は私……」

「そうか、なら一旦家に帰って服だけ取ってくる」

「無視か?無視なのか?」

「あ、安心しろよ水岡(姉)に対しての罪悪感は無いが、お前を泣かせちまったことには多少罪悪感あるから。逃げたりはしねぇよ」

「本格的に無視だな、私は」

天王はそれを更に華麗に無視し、家を出て行った。

姉はその間中暇だ暇だ言っていた。うるさい。

「あ〜じゃあお風呂入れちゃおう」

どうせ30分くらい戻ってこないだろうし、それだけあればお風呂に入りながら待つこともできるだろう。

私はお風呂場に向かい、鼻歌交じりで風呂掃除を始めた。

……いつもは億劫なのに何でこんなに楽しんでるんだろう?やっぱり…………

そんな事を考えながらお風呂の掃除を終えて「風呂自動」ボタンを押した。これであと5分もすれば沸くだろう。

そして、私は5分ほど時間をつぶし、お風呂が焚けた時のメロディーがなると早速お風呂に入った。

「はぁ、生き返る……」

ばば臭いと若干思いつつもそんな事を考えてしまう。

しばらく湯につかりながらついうとうとしてしまう。危険だと思いつつもいつも寝てしまうのだ。お風呂って……すご……い………

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しばらく眠っていたのであろうか。不意にバスルームの扉が開く音が聞こえた。

家のバスルームはまず一つ扉があり、そこの先には少し空間がある。そこで着替えだ何だをしてから浴槽に入る形になっている。

浴槽の扉は曇りガラスだが開ければ全体が見渡せる構造だ。

そして、その扉は中からは押して開ける構造なのだ。

それが災いし、あの悲劇が起きた。

「ん……姉さんかな……」

このとき私は寝ぼけていたのと、体がぽかぽかしていたのとで思考回路が鈍っていたのだろう。

いや、正しい回路をしていてもきっと扉を開けていただろう。そこには……

「ん?……おわっ、入ってたのか。悪いことしたな」

そこには自分の着替えを見られて、なおかつ目の前に半裸の(首から下はドア越しだが)女子が居るのに全く動じない天王がいた。

「え……ええええええええええええええええええええええ!!!!!」

私は後ずさりその拍子に滑って転んだ。最後にあった感覚は浴槽の扉を足で蹴り開ける感触だった。

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次に目を覚ましたのは私の部屋だった。どうやらベッドに寝かされていたようだ。

隣には椅子に座って腕を組んでいる天王がいた。

「…………私は……」

どうなったんだ、あの後確か………………

「お、起きたか。あー、無理に思い出さないほうがいいと思うぞ」

起きたのに気付いた天王がそう声をかけてくる。その間に私の中であの光景がフラッシュバックしてきて……。

「…………にゃぁああああああああああああああああああああああ!!!」

「……まぁそれが自然な反応か」

「み、見た!?」

「何を?」

「はぐらかすな!!」

「…………分かったよ。まぁ、見たな、全身」

「…………全身?」

「そう、全身」

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!変態ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」

「おいおい、そりゃないだろう?俺は気絶したお前をここまで運んでやったんだから」

「近づかないでぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

「恩を微塵も感じてないらしいな。まぁ普通っちゃ普通か」

「なななななななななななんであなたはそんな平然と……」

「興味ないので。そういうの」

「そ、そんな……………………」

酷い……。酷いよこの子……。女子の全裸見て「興味無いんで」は無いよ……。せめて恥ずかしがるくらい……。

「あ、一応言っておくがな、俺があそこに入ったのはお前の姉が『あ〜今誰もいないよ。妹?部屋で寝てるよ〜』と言ったからだからな。お前寝てたんだろうが、音もしなかったし」

「……………」

「ここまで運んだのも理由があってだな。お前の姉さ、『この刺身………賞味期限1か月前………イケる!!』って明らかに忘れ去られた所にあった刺身食ってだな、腹痛でトイレに引きこもってんだよ」

「姉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

酷いよ!酷過ぎるよ!私のは、裸をよりにもよって天王に見せるなんて!

天王は「理解したか?」と聞いてきたが私はそれどころではなかった。

「天王!あ、あんた変な妄想とかしてないよね!?実行もしてないよね!?」

「当り前だ」

「そ、そう。ならいいわ………」

「あ、それと風呂には先入らせてもらった。悪いな」

「いや、いいんだけど…………」

しかし、本当に恥ずかしい。まさかて、天王に、は、裸を……………

「うにゃーーーーーーーーーーーーーーーーやっぱり出てってーーーーーーーーーーーーーー!!」

「うわっ、急に押すなよ」

私は全力で天王を追い出し、鍵を閉めた。

「あーそれと、こぶは気をつけろよ〜」

天王はそれだけ言い残して去って行った。

「………ホント、なんなの今日は」

私はベッドにもぐりこんだ。

<悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓in姉妹 @3”完>

=作者より=

はい、文句ありますよね。まさかこんなことになるなんて思ってませんでしたよね。

いいんです、私の創作だからいいんです。

実際こんなことは起こらないって言う人は、これの本編読み直すか、作者の初めてのシリーズもの『放課後の教室シリーズ』を読んでください。この程度の非現実はどうでもよくなりますゆえ。

さ、冗談はさておき、確かにこんなことは起こらないですが、寛容な御心でなんとか次回の完結編までお耐えいただきたく存じます。

というわけで、恒例の挨拶!

それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回@4(完結編)乞うご期待!


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