悪魔の手先 ”別れと真相と真の完結@2”  作:キョン

「そういえば……」

私は明日発つ事を知って、あの私の人生の中で最も印象に残っている事件を思い出していた。

今寝転がっている布団の柔らかさを感じつつ、目をつぶって回想に思いをはせていると、ふとある言葉を思い出した。

――君さ出本と門戸に悪魔がついてますよ〜っていうヒントが有ったの知ってた?――

……ヒント?ヒントって何だろう?出本とミズに悪魔?どゆこと?

「まぁいいや、明日……聞こう……」

そして明日のために眠りについた。

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次の日の朝……

「えー今日水岡が転校することになったー。このホームルームが終わったら行ってしまうそうだ」

「知ってまーす」

「そうか。うんそうだよな。なら笑顔で送り出してやれー」

俺は机に肘をついて窓の外を見ていた。

――今日は何の話もしてこなかったな――

今日行ってしまうと言うのに、朝あいつは俺と話をしていなかった。別に問題はないのだが。

――さすがにあんなことを経験した奴が離れるってのは、直前になると寂しくなるもんだな――

窓の外で流れている雲は俺の心情を察することもなく、ただひたすらに、ひたすらに空を流れていた――。

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でホームルーム終了後……

「それじゃ……」

私はホームルームが終了後すぐに校門に向かった。今は10分間の休みだ。

「おう、じゃあな」

出本は明るく答える。しかし、声は鼻声だ。

「ふぐっ、元気でね……手紙頂戴ね……」

これはミズだ。やっぱり親友って良いね。

「うん、うん……」

私はやはりほとんど喋らず、ひたすら頷く。

ここで天王が私に話しかけてきた。

「そんなに悲しむ事でもないけどな。死に別れたわけじゃねぇんだし」

「うん……そうかもね……」

「そうそう、別になくことは無いな」

「……うん」

「友人ならなおさらだよ。会おうと思えば会えるんだからな。別れた恋人とかだったら気まずいだろうけど」

天王は表情は一切変えずに、似合わないブラックジョークを言ってきた。

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実は私は昨日の夜、あの場で「友達」なんて言ってしまったことを少し後悔していた。

「はぁ……あの時言っていればな……」

でも明日言うのはね……今日否定したばっかりなのに……。

「あぁ、何してんのよ!私!」

髪の毛をわしゃわしゃっとかき乱して、枕に顔をうずめた。

「どうしようかな……本当に……」

私はここで一旦お風呂に入った。

その対応策を思いついたのは、さっきの昔の回想中だった。

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「うえぇ〜〜〜〜〜〜ん!チューしてチューゥゥゥゥゥゥゥ!」

俺は体をサッとずらして唇が奪われるのを避けて、足をかけて転ばせてやった。

「あぶしっ!」

水岡(姉)はコンクリの地面に顔をこすった。

「なにするんだ、あんたは」

「くくくくっ、なめるなよ。この程度で私の恋の炎は消えない。むしろ、ドMな私は興奮するだけなのだぁぁぁ!」

「いや知らんけど、よくもまぁそんな簡単に自分の性癖を暴露できんな」

「愛の力はそんなものに影響されはしない!」

「そんな力はないが」

少し遅く水岡の中学の前についた水岡(姉)は、俺を見ると迷いなく唇を奪おうとしやがった。油断も隙もない……。

「姉さん!そんな事はしちゃダメ!車に入ってて!お父さん!鍵閉めて!」

私は無理やり車に乗せたのち、扉を閉めて閉じ込めた。

「ふぅ、ごめんね」

「いいさ、大丈夫だったし」

「うん、そうだね……」

ミズと出本はもう戻ってしまった。どうやら何かの仕事があるらしい。天王は私が呼びとめたから行っていないが。

「で、お前は何で俺を呼びとめたんだ」

「え、あ、あのさ、あの時」

「あの時っていつだよ」

「あ、うん。出本とミズにあった悪魔のヒントってなんだったの?」

「……別にいいが、何でいまさらそんなことを思い出したんだ?」

「え……あの、昨日思い出を思い返してたらね」

「あっそ、あーあれはな、出本と門戸の頭文字にあるんだよ」

「頭文字?」

「そ、”出”本と”門”戸だろ?それをローマ字にすると"DEMON"になるだろ? これってデーモン……つまり、悪魔って意味の単語なんだよ」

「……おおぉ、凄いね。よく気づいたね、こんなの」

「偶然だよ。で、用はそれだけか。なら帰りたいんだが」

天王は親指で校舎の方を指した。

「あ、えっと、まだあってさ……」

私はまだためらっていた。こんなことを本当に私がしていいのだろうかと。

でも……やんなきゃだめだよね。伝わらないもんね。

「なんだよ、さっさとしてくれないか」

「……うん」

私は天王に近づいた。

そして……


頬にキスをした。


「……何してんだ、テメェ」

「ひぇっ!?」

天王は不機嫌になった。なんで!?

「お前んとこの姉妹は……本当にっ……!」

「ちょ、ちょっとタイム!」

「タイムも何もあるわけねぇだろうが!お前!昨日確か俺に言ったよな、友達だって!嫌がらせでもしてぇのかよ!」

「あ、あれは照れ隠しと言うか……」

「あぁん!」

「す、すいません!」

ふえーん!なんでなんで!?

「俺はもう帰る!」

「あ、ちょっと!」

「あのな、マジでいい加減にしてくれよ!俺はそんなのに興味ねぇんだよ!」

「……うん、そう……だよね……」

「そうそう、俺は帰るから、じゃ!」

「えぇ!?このシリアスパターンも駄目!?」

「うっせえよ!マジでいい加減にしろよ!」

あぁもう! 私は帰りそうになる天王を無理やり引きとめて、そして――


抱きついた。


「なんだテメェ!邪魔すんじゃ……」

「待って!」

「!!」

私は引き離そうとする天王を声で制止して、

「……ごめん、しばらくこうさせて……」

と言った。天王はしばらく黙って考えていたが、結局、私に言われるがまま、抱きつくのを引き離そうとはしなかった。

「……お前さ、大学……いや、高校でいい、その時までもしも俺のことを好きだったら、こっちに来い。そのころは考え方も変わってるかもしれないから」

天王は私に抱きつかれながら、こんなことを言ってきた。

「うん、うん……」

私は泣きながらこう答えた。天王は私の頭を撫でてくれた。

そして、これが天王と私の最後の会話だった。

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車の中で……

「いやー大胆!」

「姉さんが言わない!これ、姉さんの行動を参考にしてるんだからね!」

という言いあいがあったり、なんだりしていた。

しかし、最後に姉が言ったのは、

「でも、あの人は私がもらうよ!」

だった。私はそれに反抗した。

「姉さんは無理だよ、だって私がもらうからね!」

よく考えると、なんかすごく複雑な関係になっているのでは?と思ったことは、自分の気のせいだと思うことにした。

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それから7年後……

「ふぅ」

俺は息をついた。

「終わった〜?」

と、ソプラノ歌手のようなきれいな声が聞こえる。

「あぁ、もう後書きの所だけだ。今書いてる」

俺はNotepadの画面を見ながら、今の会話の記録を打った。

「あ〜じゃあ私の仕事はもうない!?やったぁ〜」

「はいはい、呑気でいいね」

俺は隣の七海子に対して言い放った。

「それに、仕事っつっても掲示板に投稿するだけだけどな」

俺は会話をしつつ、会話を打ちこんでいく。

「ってあぁ!今の会話打ってるの!?」

「そうだよ」

「あぁ!じゃあお化粧を……」

「何で小説で化粧すんだよ!」

「あぁそういえば!」

「驚くなよ!はぁお前は……いつまで経っても抜けてんな……」

七海子は意地の悪い笑みを浮かべて、

「でも、そこも含めて好きになったんだよね?」

……まったく、お前は……、よく恥ずかしげもなくそんなことが言えんな。


あの後、俺と七海子は結婚した。


高校になって本格的に告白してきたこいつを俺は受け入れて、20歳という境目で結婚を決めた。

俺の親には猛反対されたが、水岡の親はあの光景を見ていたせいか、素直に認めてくれた。俺の親も結局水岡家に言いくるめられたらしい。

水岡家と言えばあの姉についてだが、俺に振られてからは普通に彼氏を作っていた。俺なんかよりも人のよさそうな人で、顔もいいからお似合いだろう。

門戸と出本は今は付き合っていない。門戸は大学に、出本は就職をしたので、門戸が卒業するまではそれぞれの道を歩くそうだ。いずれまた一緒になることは確定だろうが。

「ねぇねぇ、まだ終わらないの? 早く終わらせてさ……うふふふ」

「何をする気だお前は」

「そんなの、直接的な表現ができないあーんなことや、そーんなことだよ!」

「うっわー最悪の下ネタだー」

「むー、いいじゃないか!結婚してるんだよ!まだ1年も経ってないんだよ!新婚なんだよ!」

「はいはい、わかったから、そんなことはしないけど」

「えぇ!結婚する前も何もしてくれなかったのにぃぃぃぃぃ!」

「お前ほんとやめとけ!エロキャラとして見られるぞ!」

「うぅ……」

はぁ、こいつは全く……。

俺はまたNotepadの画面に目を戻して、今のセリフを打ちこんだ。

「えぇ!今の載せるの!?」は無視して打ちこむ。「えぇ!ちょっ、ほんとやめて!」も無視。

俺たちは今こんな感じで幸せにやっている。あの後音沙汰のなかった大川も無事に悪魔を捕まえて、母親を生き返らせられたらしい。良かったね。

全てはうまくいった。そういうもんだ、人生なんて。

俺みたいに偽の殺人の記憶を持っていた人間だって、こんなふうに幸せになれるものなんだよ。ん?説得力無いか?

「ちょっと、これ、本格的に変態に見られない!?」

という声も、どこか楽しい感じが混じっている。俺はハハッと笑いかけ「そうだな、でもそれあってこそのお前だから」と答えてやった。

「え?それ褒めてるの!?」

「ハハッ、アハハハハハッ!!」

「ねぇどっち!?どっちなのよぉ!?」

な?こんな感じで楽しくやれてるんだよ。人生も捨てたもんじゃないだろう?

悪魔なんてものに影響されたり、非現実に巻き込まれた俺が言うんだ、絶対の自信を持っていい。


この世は幸せで満ちてるんだってことをさ!


<別れと真相と真の完結@2 完>
<悪魔の手先シリーズ 完結>

=作者より=

終わりました。本当に終わりました。

……ほらそこ!「終わらせ方が強引」とか言わないの!

まぁでも、いろいろ楽しかったんでよしとしましょう。

ではこの作品最後の謝辞で締めくくらせていただきます。

ここまでこれを書き続けられたのも、ひとえに皆さまのおかげです。ここでお礼申し上げます。

これからは別のホームページで小説を投稿していこうかと思っていますので、ここでの更新はあまり無くなってしまうかもしれません。

もしもそのページを知りたい方は「小説 投稿」とググってください。それの一番上のページのはずです。名前は「山口流」です。

それでもおそらく、別のページに載せたやつをこちらに載せ直すと思うので大丈夫だと思います。

それではっ、このような拙い小説に最後まで付き合ってくださった皆々様に心からの感謝を。次回作もご期待ください!


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