私はあの時死んでいた?その1      作:高杉伸二郎



人には運というものがある。運が悪ければ死んでいる。(私はあの時死んでいたかも知れない)と思ったことありませんか。私の九死に一生とおもわれる出来事を振りかえってみた。 

その1
 室戸台風が四国徳島を直撃した。私が2歳だった。家の前の排水溝の水は道路まで溢れ勢いよく流れている。
「あれ? 伸二郎がいない!」と母親は叫ぶ。
「あそこにプカプカ流れているのは何だ」
 近所の人の叫びに指さす方をみると、黒いものが浮いたり沈んだりして向こうに流れているのが目に入った。人間の頭みたいだ。
「もしかして伸ちゃんではない?」

居合わせた数人が走って行った。それはまさしく伸二郎が流されているところであった。 頭が時々浮かんで見える。隣の山本さんが溺れているところを急いで助け上げてくれた。
そばにいた一人が急いで人工呼吸をした。
「……だめだ。だれか代わってくれる人はいませんか!」
そこへ細身の白髪の老人がいた。
「わたしがやってみよう」  
「…… …… ううっ!」 
 伸二郎は大量の水を吐きだした。意識が戻ったかと思われた。
「もう少しやってみる。もう大丈夫かな」
 それからすぐ病院に運ばれ、伸二郎は助かったのだ。
 後年、この話を聞きあの命の恩人、白髪老人を求めて徳島に渡ったが既にこの世を去っていた。


コメント

3点 陽一 2012/01/08 16:30
感動です 涙が出そうです


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