色のない世界 第二章.通告  作:Mr.こしょう

どのくらい走っただろうか。たまに方向を指示してくる声に従って走っていた。
 そろそろ限界だと思った時にまた声がかかった。
「ここまでくればもう大丈夫だろう。もう止まってもいいぞ。」
 僕はその声を聞いたとたんに足から力が抜けてその場に座りこんだ。
 周りを見渡すと洞窟が見えた。僕は迷わずその中へと入っていった。



 洞窟の中は意外と広く一人の人間がそこにいた。その人は言う。
「さすがにここまでは追っては来ないだろう。ようやくゆっくりと話ができるな。」
 その言葉を聞いてとりあえず僕は安心する。



「そうだな…何から聞き始めるか。」
どうやら僕に質問をする気でいるようだ。
「とりあえず僕から質問してもいいかな。いきなりわけもわからないことの連続でかなり混乱しているんだ。」
「まあ、それも当然だろうな……別に構わない。自分が納得できるまで好きなだけ質問してくれ。」
 なかなかいい人だな。ならば好きなだけ質問させてもらおう。



「ここどこ?」
「それは少しややこしい話になる。順番に話してやるが今は話せない。」
 とりあえず後回し。確かに僕の持っている常識では理解できないだろう。他の質問。



「君は誰?」
「俺はお前と同じような人間だ。」
「同じような?」
「そう。お前と同じようにあの連中に追われている人間。」
「なぜ?」
「その話はまたあとだ。」



「じゃあ、名前は?」
「無い。」
「無いって……」
「無いものはない……名前はつけられなかった。」
 なにか触れてはならないことのようだ。



いろいろと考えているうちに彼は話題を変えた。
「さて、質問はそれで終わりか?そろそろこちらからも質問させてもらおうか。」
「聞きたいことはまだたくさんある。」
「でもわからないことだらけだろう?全部質問していたら時間がいくらあっても足りないぞ。」
 ごもっともな意見だ。



「さて、こちらからの質問だ。といっても簡単な話だ。何年から来た?」
「何年から来たって……どういう意味?」
「うーん…そうだな。じゃあ今何年だと思う?」
「そんなの2009年に決まってるじゃないか。」
「残念でした。今は2239年です。」



「……」
「……」
「何年だって?」
「あれ?聞こえてなかったか?今は2239年だって。」
「とすると、ここは未来だと。」
「お前の時代から見れば、そのとおりだ。」


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