願えばきっと…。 2  作:つぼみ



 「いってきまーす。」

そう言って花音こと沢内花音は玄関のドアを開けた。

「いってらっしゃーい!」

そう言ったのは花音の母親がわりの由紀と姉がわりの由良だ。

 花音は幼い頃、実の母親と2人暮らしをしていたが、育児のストレスと父親の裏切りがショックだったらしく

花音は暴力を受けていた。いわゆる『虐待』。

それから花音は母親と別れ、孤児院に入ったが、極度の人見知りと母親からの虐待のトラウマから

孤児院でも浮いていた。

 そんな花音を預かったのがこの家族だ。

 由紀と父親がわりの明久は夫婦で仲が良く、由良もとても優しく明るい。

最初、花音は怯えていたが、少しずつ心を開いていき、今は本当の家族のように暮らしている。

 花音はこの人たちがいたから今こうして笑顔で生きている。

「花音!まって!」

 ドアを閉めようとした時に由良が呼び止めた。

「ほら、これあげる。」

 そういって由良は花音のポニーテールしている髪に何かつけた。

 薄い緑のシュシュだ。

「花音に似合うと思って買っといたの!うん、よく似合う!」

「えへへ…///ありがと!お姉ちゃん!それじゃ、行って来るね!」

 花音は元気よく家を出た。

 (今日はいい日になりそう!!)





 学校に行くには、電車に乗る。およそ5駅程。

(あぁぁぁ!電車行っちゃう!!!!)

 〜ドアを閉めます。〜

 (ギ、ギリギリ間に合った…。)

「あ、沢内さんおはよっ!あとお疲れ様(笑)?」

 (…前言撤回…。今日は厄日だ。)

「お、おはよう。島上くん。」

(昨日あれほど委員以外で関わらないって決めたのにーっ…!)

 そう。花音の目の前には花音の苦手な相手、島上修が立っていたのだ。

「昨日はメール返してくれてありがとう!…あっ沢内さんってこの駅なの?」

 島上はいつものように笑顔で言った。

「いや、別に大丈夫だよ。あ、私大井町なんだ。」

大井町とは花音が今住んでいる町の事だ。

「え!?そうなんだ!僕隣町の飯岡町だよ!しかも大井町寄りの…。」

 花音も初耳だったので驚いた。

では、この1年近く同じ電車に乗っていた、という事になる。

(はじめて知った…。今まで興味もなかったから…。)

 興味もなかったのも当然。

今まで花音は同じ委員になるまで島上とも話したことがなかったのだ。

あったとしても少しぶつかりそうになった時の「すみません」の一言だけ。

 「ねぇねぇ!」

島上が言った。

「一緒に学校行こ!」

(あぁ、なんでこんな展開になるかなぁ…。)

 そう思いつつもこんな笑顔で言われたら断れない。

「うん、いいよ。」

 花音は本心を隠して微笑んで『Yes』と言った。




                  ー続くー


コメント

つぼみ 2013/09/16 20:21
こんにちは!
『願えばきっと…。』の2話目作ってみました。
よかったら1話目の方も見ていただけると嬉しいです!


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